「物流業務における課題を解決したい」と考えていても、何を改善するべきか分からない担当者の方は多いのではないでしょうか。
本記事では、コスト削減、リードタイム短縮、在庫管理の効率化などの業務改善についてピックアップしつつ、物流業務で起こりがちな課題とその解決策について解説していきます。
他社の成功事例もご紹介しますので、最新の物流改善技術やトレンドを把握しておきたい方は必見です。
物流改善の課題と解決策
物流改善を目指すにあたって、はじめに課題を明確にしておくことが大切です。
多くの物流会社において発生しがちな課題として、「物流コストそのもの」「リードタイム」「在庫管理方法」について、ムダが発生している場合が散見されます。
具体的にはどのような改善を実行できるのか、具体例を基に見ていきましょう。
物流コスト削減の課題と解決策
物流コストとは「物流に関わるあらゆるコスト」を指します。具体的には人件費、システム関連費、倉庫維持費、商品管理費などに細分化されますが、物流コストを削減するには上記に関するムダを一つひとつ削減していく必要があります。
ここで注意が必要なのが、「流通加工作業を製造原価に含めて計算している」など、経理上何にムダが発生しているのかが分かりにくくなっているケースがある点です。
だからこそ、特に社内においては物流コストに関する認識力を高めることが重要です。例えば、梱包や在庫管理業務の例を考えてみましょう。ハンディターミナルを導入しているにも関わらず、出荷時のミスが減らない現場があるとします。
その場合、商品の検品やハンディの操作方法が担当者によって異なる等の原因が考えられます。作業をより効率良く進めていくためには、新人からベテランまで誰もが簡単に取り組めるマニュアルを作成する他、作業スペースを拡大する等の方法でコスト削減を進めることが重要です。
しかし、作業量を増やすためだけに倉庫スペースを拡充する等の対策をとった場合、逆に作業効率が悪くなり、無駄なコストを発生させてしまうこともあるので注意が必要です。
また、トラック輸送ではなく船便や鉄道輸送等、既存の配送網に置き換えるモーダルシフトも有効です。ただし船や鉄道の輸送は小回りが効かない分、異なる企業間での共同配送等の取り組みも進めていくことが重要です。
リードタイム短縮の課題と解決策
販売リードタイムが長いことで、製品の開発から納品まで膨大な時間と労力が発生しているケースがあります。また、各工程を委託する業者の所在地が異なるせいで、委託先同士での輸送コストが発生するなど、ムダが何重にも重なってしまう事例があります。
解決策として、特定の物流センターに一括でアウトソーシングすることでコストを減らせます。例えばアパレル業界においては、ささげ・繊維加工・在庫管理・出荷・カスタマーサポートにかかる販売リードタイムを一元管理し、外部の業者へ委託する方法があります。
このようにフルフィルメントタイプの物流センターへアウトソースすることで、コストダウンを進められるケースがあります。
在庫管理効率化の課題と解決策
商品管理を行う倉庫内が整理されておらず、取扱商品の種類が増えることで全スタッフがロケーションを把握できなくなる事例があります。その場合、業務に慣れたベテランの方など、特定のスタッフのみに業務が偏ってしまう等、作業効率の悪化は避けられません。
解決策として、倉庫管理システム等のツールを導入し、ロケーション管理を徹底することで、人件費を削減させるというのが建設的な方法と言えます。新人でも特定の社員に頼ることなく作業を進められる環境となれば、倉庫管理が最適化されている状態と言えるでしょう。
業界別・規模別 物流改善事例
ここからは、業界や事業の規模別に物流改善ができた事例をご紹介します。
EC業界の物流改善事例
EC業界は「物量が比較的少なく、配送先が多岐にわたる」「配送日時や料金に関してオーダーごとに異なった個別対応が必要」「ギフト包装などラッピング対応が必要な場合がある」という特徴があります。
新型コロナウイルスの影響で多くの企業が実店舗からWEB上で完結するECサイトへシフトしている影響もあり、今後ますますEC市場が拡大していくことが予想されます。
そんな中EC業界においては「常に最短の納期を求められる」「急なキャンセル等への対応」「繁忙、閑散の波が激しい」といった課題が多く、EC業界の物流改善には様々な取り組みが必要となります。
過去の改善事例を踏まえると、「ロボット等IT技術を取り入れる」「作業工程を分解し、オペレーションを見直す」という方法が有効です。
特に人力からロボットにシフトすることで、人の手が空き、人件費を効果的に使うことができるようになります。IT技術を活用することは物流オペレーションを自動化することにも繋がり、効率化を目指すことに繋がります。
また、作業工程の見直しに関しては、「作業を単純化する」ことが重要です。例えば梱包作業であれば、流通加工があるかどうかで分類し、「流通加工あり工程」「流通加工なし工程」に分けて考えます。特に「流通加工なし工程」に関する梱包作業を見直すことで、これまで余分な工数がかかっていた部分を改善し、効率化を図れます。
製造業の物流改善事例
製造業に関する物流改善を進めるには、ムリ・ムダ・ムラの3Mやミスによって発生しているロスをどうするかが重要です。特に日によって物量が変わる現場においては人員配置が難しく、一朝一夕には上手くいかないのが現実です。
物流改善事例としては、高性能なハンディターミナルやRFID、コードリーダー等の機器を活用することがポイントとなります。IT技術を活用することで、業務全体の情報収集から効率向上までスムーズに進めることができます。 さらにマニュアル作成を進め、特定の作業に属人化することを防ぐことで3Mを減らすことができます。
中小企業の物流改善事例
中小企業が物流改善を進めるには、物流DXによる変革に取り組む必要があります。物流DXの目的は、「機械化、デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」とあります。 具体的には電子化や物流に関するデータ基盤の整備、ロボットやドローン等IT技術を活用することでオペレーションの改善や働き方改革を推進していきます。
その結果商品、在庫、顧客データ等の管理が進み、業務効率化だけでなくテレワークを推進することや労働時間の適正化にも繋がります。中小企業の担当者はすべてのリソースを企業内で完結させる必要はありませんので、積極的にアウトソーシングに繋げていきましょう。
最新の物流改善技術
ロボットやドローン等の最新のIT技術を活用することで、物流改善に繋がった事例は多数あります。全ての技術を自社で完結する必要はありませんので、必要に応じてアウトソーシングしていくことも必要です。
AI・機械学習の活用
ある企業が、食品の在庫管理を複数の委託先倉庫で行っていました。アナログ管理だったために目視での賞味期限確認には限界があり、ロスが発生しやすい状態となっていました。
そこで在庫管理システムを導入し、複数の倉庫を利用したまま適切な在庫管理をする運用に変更しました。すると業務全般をデジタル化することにも繋がり、業務負担の軽減、需要予測もデータとしてピックアップできるようになりました。企業の損益の改善にも繋がる事例となりました。
IoT・センサー技術の活用
物流におけるIoTの活用によって「在庫をリアルタイムで監視」するようになった企業があります。瞬時に「商品がどこに何個あるのか」が分かるようになり、注文の受付や発注が正確に行えるようになりました。
データもクラウド上に記録するため、オンライン上であればいつでもどこでも確認ができる他、在庫の出入りもセンサーで記録されるので、データと実数の差も発生しなくなりました。棚卸の際も在庫確認が行いやすいので、会社全体の生産性が向上した事例となります。
ロボティクス・ドローンの活用
物流業界も人手不足が続いており、ロボットやドローンを倉庫内活用する企業も増えています。倉庫内での「仕分け」や「ピッキング」といった単純作業を機械に任せることにより、人の負担を軽減させる他、倉庫内業務全体の生産性を向上させることができます。
例えば、倉庫の棚まで自走し、棚の商品をピッキング作業者へ運ぶロボットを導入した企業があります。その結果、スタッフは人の手が必要となる作業に集中することができるため、安定した業務を継続できるようになっています。他にも物流センター間でドローンを活用するなど、自動化することで業務効率が改善された事例もあります。
物流改善のステップとポイント
物流改善を行うためには、物流業務における現場の負担について精査をするところから始めます。その上で、具体的な改善策を実行し、その結果より良い運用を行うためにマネジメントを継続していくことが大切です。項目ごとに分けて見ていきましょう。
現状分析と課題特定
物流に関する課題は、「輸送環境」「輸送におけるプロセス」「人材育成」「輸送方法」について発生します。例えば輸送環境に関して、倉庫の立地環境やピッキング設備、トラック等ハード面に関して業務改善ができる場合があります。
輸送のプロセスに関しては、業務の工程そのもの、在庫データ管理方法を人力に頼っていないか等の課題が残っている場合があります。事業者ごとに課題は異なり、最適な解決策も変わってきますから、まずは自社の課題がどこにあるのか現状分析及び課題特定を進めることが重要です。
改善策の立案と実行
事業者ごとに異なる課題が特定できたら、次に改善策を実行していきます。例えば「拠点内の業務効率化」「人的ミスの予防」「労働環境の見直し」「物流コストを見直す」「業務をアウトソーシングする」等の方法が挙げられますが、実行した場合の効果検証が重要になってきます。
コンサルを行うプロに相談することで、期待できる効果が具体的にどれほどのものなのかを事前にシミュレーションすることも可能です。また、実行後はやりっぱなしにするのではなく、実際の効果がどれほどあったかを検証することが重要です。
継続的な改善
物流業務効率化について適切なオペレーションが実行できたとしても、継続していくのか、それともアプローチ方法を変えて対応するべきかについて、検討することが重要です。
例えば、倉庫内の業務効率化を進めるためにロボットを導入した場合、一定の業務効率化が見込まれる可能性は高いでしょう。しかし、その結果浮いた人材労働力を上手く活用できなければ効果を最大化することは難しくなります。
引き続き最新技術の導入についての情報を仕入れつつ、人材育成やマニュアルの作成等も進めていくために、PDCAを回していくことが大変重要と言えます。
まとめ
物流業務における課題を解決したい場合、しっかりと自社の課題を洗い出し、適切なステップを踏んで改善を進めていくことが必要と分かりましたね。特に「現状分析と課題特定」が重要で、例えば「輸送環境」「輸送におけるプロセス」「人材育成」「輸送方法」におけるどの箇所に問題があるのか、分析しなくてはなりません。
もし分析を誤った場合、改善のベクトルが全く違う方向を向いてしまうことになるため、改善どころか事態が悪化しコスト増となってしまう恐れもあります。具体的な改善策を実行できたら、継続してより良い運用を行うためにPDCAサイクルを回すなどマネジメントを継続していくことが大切です
自社のマンパワーだけに頼ることがコスト削減に繋がっていると勘違いされることがありますが、人手不足の現状も踏まえて今後は積極的にアウトソーシングに頼っていくことが重要です。
「AI・機械学習の活用」「IoT・センサー技術の活用」「ロボティクス・ドローンの活用」というように、最新技術を活用して物流プロセスの生産性を高めることをおすすめします。