皆さんは、「輸送」と「配送」の違いをご存じでしょうか?
物流現場で使われる用語であることは知っていても、それぞれの違いを説明しようとすると、言葉に詰まってしまうのではないでしょうか。さらに、「運送」が加わると、ますますよく分からなくなるのも当然です。
そこで今回は、「輸送」「運送」「配送」の違いを、さまざまなポイントから解説します。知っておくととても役に立つ内容ですから、最後までよく読んで参考にしてください。
輸送・運送・配送それぞれの違いと物流における役割
輸送・運送・配送の基本的な定義と、物流における役割を解説しましょう。それぞれの違いを理解すると、物流業界の全体像を把握するのに役立ちます。
輸送・運送・配送の定義と違い
まずは、輸送・運送・配送の定義と違いについて見ていきましょう。
- 輸送:人や物を一定の方向に運ぶことで、一次輸送・運輸と呼ばれることもある
- 運送:人や物を目的の場所に運ぶことで、二次輸送と呼ばれることもある
- 配送:特定の目的地や人に物を運ぶこと
3つの言葉のいずれも、物や人を運ぶことを指しつつも、厳密には意味が異なることが分かります。一般的には、私たちの手元に物が届くまで、輸送→運送→配送という流れです。
輸送・運送・配送の物流それぞれの役割を紹介
ここでは、輸送・運送・配送の物流での役割をご紹介します。それぞれに、異なる役割があることが分かります。
- 輸送:外国や遠方の生産地から目的地までの運送拠点まで物を運ぶ
- 運送:運送拠点から配送拠点(物流センターなど)まで物を運ぶ
- 配送:配送拠点から小売店や消費者へ物を運ぶ
たとえば、海外から輸入した物は、輸送によって輸入商社の運送拠点に届いた後、運送によって物流センターなどの配送拠点に届きます。さらに、配送によって小売店や消費者の手元まで届くといったイメージです。
現場目線での輸送・運送・配送の具体的な違いとは?
ここでは、実際の業務現場における輸送・運送・配送の違いを解説します。移動距離や使用する車両、コスト構造の違いなどを、具体的に見ていきましょう。
どこまで運ぶ?輸送・運送・配送の対象範囲と移動距離の違い
輸送・運送・配送の対象範囲や移動距離のイメージとしては、輸送>運送>配送と考えてください。具体的には、以下のとおりです。
- 輸送:長距離移動が多く、数100km以上になることも多い
- 運送:中長距離移動が多く、数十~100km程度までが一般的
- 配送:主に短距離移動となり、~20km程度までのケースが多い
トラック?飛行機?輸送・運送・配送で使用する主な車両と設備
輸送・運送・配送は、それぞれ使用する車両や運搬方法にも違いがあります。詳しくは、以下のとおりです。
- 輸送:大型車両(大型トラックなど)・船舶・飛行機・鉄道などあらゆる車両や運搬手段を使用
- 運送:主に大型車両を使用
- 配送:物の種類によって大型車両・小型車両(軽トラックなど)を使用
輸送は、長距離を移動しながら多くの物を運ぶことから、飛行機・船舶・大型車両などの中から最も適した運搬方法をその都度使用します。運送は陸送が主体となり、中長距離を移動することから、大型車両が主流です。配送は、小売店や消費者に物を送り届けるため、大型車両や小型車両が混在します。
コストはどれくらい違う?輸送・運送・配送のコスト構造を比較
輸送・運送・配送では、以下のようにさまざまなコストがかかります。
- 車両のチャーター費(自社所有ではない場合)
- ガソリンなどの燃料代
- 保管費
- 人件費
- 駐車場代
- 車両などのメンテナンス費
なお、輸送は長距離での移動となり、航空機・船舶・大型トラックなどを使用するため、ガソリンなどの燃料費が運送や配送と比較して特に高くなる傾向があります。
輸送・運送・配送の疑問を解決!よくある質問Q&A
ここでは、輸送・運送・配送についてよくある質問をQ&A形式で解説します。みなさん気になる内容ばかりですから、ぜひ読んでみてください。
輸送・運送・配送は誰が依頼するの?
輸送・運送・配送は誰が依頼するのかについては、以下をご覧ください。
- 輸送:運送業者
- 運送:配送業者
- 配送:小売店もしくは消費者
最終的に小売店や消費者の手に渡るまで、3段階の依頼があることが分かります。送り先が依頼者となり、輸送・運送・配送が行われるのが一般的です。
輸送・運送・配送の料金相場は?
輸送・運送・配送の料金相場は、運搬する物の種類・移動距離・運搬手段によって、大きく異なります。そのため、料金相場を調べるときは、細かな条件を指定することが必要です。
ここでは、中古車を運送(専用車両による陸送)した場合の料金相場の例を区間別にご紹介します。
- 東京~大阪:45,000円程度
- 大阪~福岡:50,000円程度
- 北海道~福岡:100,000円程度
輸送・運送・配送でかかる時間は?
輸送は、使用する運搬手段によってかかる時間が異なります。最も早く届くのが航空機を使う空輸で、条件にもよりますが、数時間~1日といった短い日数での運搬が可能です。
一方、運送は大型トラックなどを使用した陸送での運搬となるため、同じ距離で届けることを前提とすると、輸送よりも時間がかかります。場合によっては、3~4日以上かかることもあるでしょう。なお、配送は近距離での運搬が主流なので、陸送であっても、数時間~1日程度となるケースが多く見られます。
2024年最新!輸送・運送・配送業界のトレンドを解説
ここでは、2024年の今、輸送・運送・配送業界にどんなトレンドが見られるか、詳しくご紹介します。
ドローン配送や自動運転トラックなど、最新技術の導入事例
物流業界は、深刻な人材不足が続いています。競争激化による納期の短縮化により、物流業界にもスピード感が求められ続けた結果、労働条件が悪化し、ドライバーのなり手が激減しているからです。また、2024年以降、トラックドライバーの時間外労働について960時間上限規制が実施されたことも、一因といえます。
物流業界の問題を解決するため、現在、ドローン配送や自動運転トラックなど、人に頼らない配送技術の開発が積極的に進められています。
ドローン配送では、AmazonやWalmartによる海外での実証実験が有名ですが、日本国内でもドローン配送トライアルが行われています。2023年3月には、日本郵便株式会社がレベル4飛行(有人地帯における目視外飛行)のドローン配送を東京都西多摩郡奥多摩町で実施しました。ドローン活用により、人材不足だけでなく、空路による配送時間の短縮や、積雪や土砂崩れによる陸送が難しくなった場合の迅速な配送が実現するため、今後の利用拡大が期待されています。
環境に配慮した輸送・運送・配送の取り組み
全世界がSDGsに強い関心を持ち、環境活動が盛んに行われている今、輸送・運送・配送に関しても、環境に配慮した取り組みが急務となっています。
物流業界では、「カーボンニュートラル」を目指してCO2の排出を削減する目的で、ハイブリッド車両や電動車両への入れ替えが順次行われています。また、業務の流れを見直して無駄な工程を省くことも、結果的に省エネになり、環境への配慮につながることから、各企業で積極的に行われています。
グローバル化が進む中での輸送・運送・配送の課題と対策
物流業界もグローバル化が進む中、人手不足を解消すべく積極的な人材の確保と、さらなる業務の効率化が今後の課題といえます。まずは、人と環境にやさしい物流システムを作り上げることが必要です。
また、消費者もむやみに納期の短縮化を求めることをやめ、物流業界が抱えている問題に関心や理解を示し、協力することが大切です。企業と消費者の双方が理解・協力できれば、徐々に状況を改善できることでしょう。
まとめ
今回は、「輸送」と「配送」、さらには、「運送」の違いについて詳しく解説しました。いずれもよく使われる物流用語ですが、それぞれの違いや役割をきちんと理解することで、物流業界を深く理解できます。
加えて、現在物流業界が抱えている環境問題や人材不足などの問題にしっかり向き合い、適切な対策を取ることが大切です。現在、物流業界では、環境問題への対応やグローバル化が進んでいます。消費者としても、物流業界が抱えている問題を他人事と考えず、納期をむやみに急がせないなど、それぞれができることを進めていくことが必要です。