物流業界のなかにあって、最新技術を導入して成長を目指したい方もいるでしょう。または人手不足や環境問題といった課題への解決策として、AIやIoTの活用方法を知りたい方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、物流業界の課題や取り組むべき課題、AIとIoTが物流業界をどう変えるかなどを解説します。最新技術を物流業界でどのように活かせばよいかわかる記事です。ぜひ最後までご覧ください。
物流業界を悩ませる深刻な課題:人手不足と業務効率化の遅れ
物流業界を悩ませている課題は人手不足の進行と業務効率化の遅れです。それぞれの課題にどのような原因があり、影響を与えているか把握することで、具体的な対策もたてやすくなります。以下で解説するので、しっかり把握しておきましょう。
ドライバー不足が招く配送遅延とサービス低下:その原因と影響
物流業界におけるドライバー不足は、少子高齢化や労働環境の過酷さが主要な原因です。2022年の厚生労働省「職業安定業務統計」では、日本のトラックドライバーの有効求人倍率は3.23倍となっており、全産業平均の約2倍に達しています。
これにより配送スケジュールの遅延やサービスの低下が頻発しています。具体的には、商品の到着が予定より数日遅れるケースが増加しており、特に食品などの生鮮品では品質低下や廃棄リスクが高まっています。
また、ECサイト利用者にとっては注文から受け取りまでの時間が長くなることによる、顧客満足度の低下も課題です。この問題は、物流全体の効率にも悪影響を及ぼしています。
手作業中心の業務がもたらすコスト増とミス発生:デジタル化の遅れが招く問題
物流業界でデジタル化が遅れると、手作業中心の業務が続き、コスト増とミスの発生が起こりやすいです。例えば、在庫管理や配送ルートの最適化が手作業で行われると、人的ミスが生じやすくなり、商品の誤出荷や配送遅延が起きます。
また、手作業によるデータ入力は時間がかかり、人件費が増加するだけではなく、入力ミスによるトラブル対応にも追加コストが発生します。特に、在庫データの誤入力が原因で商品が欠品し、取引先との信頼関係が損なわれるリスクに注意が必要です。
このような問題は、業務効率の低下と企業の競争力低下につながるため、早急なデジタル化が求められています。
環境負荷低減が急務:物流業界が取り組むべきサステナビリティ
物流業界では、環境への負荷が問題として取り上げられることが増えてきました。特にCO2削減に向けた取り組みや梱包材の削減とリサイクルが課題となっています。
環境問題は持続可能性を意味するサスティナビリティに深くかかわっています。物流業界はトラックを走らせるなどCO2の排出が避けられない業界だけに、対応は必須です。以下で具体的な取り組みを解説します。
CO2排出量削減に向けた取り組み:電動車両導入やルート最適化
物流業界における環境への取り組みとして、電動車両の導入や配送ルートの最適化が進んでいます。これらの取り組みにより、CO2排出量の削減が実現されています。
例えば、ヤマトホールディングスは2030年までに全車両を電動車両へ切り替える目標を掲げており、2023年には約500台の電動トラックを導入しました。この取り組みによって、年間で約2,500トンのCO2排出が削減される見込みです。
また、日本郵便はAIを活用した配送ルートの最適化により、従来の配送ルートと比べて約15%の燃料消費削減を達成しています。これにより、年間約1,000トンのCO2排出量が減少する見込みです。
さらに、佐川急便も再生可能エネルギーを活用した物流センターの運用や、ハイブリッド車の導入を進めており、これらの取り組みを通じてCO2排出量削減を図っています。
これらの企業の取り組みは、持続可能な物流の実現に向けた重要なステップであり、業界全体の環境負荷低減に大きく貢献しています。
循環型物流の実現:梱包材の削減とリサイクル
物流業界では、環境への配慮として梱包材の削減とリサイクルが進められており、これにより循環型物流の実現が目指されています。
たとえば、ヤマト運輸は2021年から「折りたたみコンテナ」を導入し、再利用可能なコンテナを使用することで、年間約200万枚のダンボール削減を達成しました。
また、日本郵便はリサイクル素材を使用した梱包材の採用を進めており、再生紙を使用した封筒や包装紙の利用率を50%以上に引き上げています。
楽天も配送におけるプラスチック使用量を削減するため、従来の梱包材を見直し、紙製緩衝材や再生可能な素材への切り替えを行っています。この取り組みにより、年間で約1,500トンのプラスチック削減される見込みです。
これらの取り組みは使い捨ての梱包材を減らし、リサイクルを促進することで、資源の無駄を最小限に抑える効果があります。企業ごとの具体的な行動は、持続可能な物流への移行に大きく貢献しており、今後もその重要性が増していくでしょう。
AIとIoTが変える物流の未来:自動化とデータ活用で新たな価値を創造
AIやIoTといった最新技術は発展を続けている段階で、自動運転をはじめとした実用化に至っていない技術もあります。これらの技術をいち早く取り入れることで、人手不足やサービスの質低下へ対応できるだけではなく、企業の成長も望めるでしょう。
特に重要と見られるのが、AIによる需要予測と在庫管理の最適化、IoTセンサーによる配送状況の把握です。以下で2つの技術に関して解説します。
AIによる需要予測と在庫管理の最適化:無駄なコスト削減と顧客満足度向上
AIとIoTは物流業界の未来を大きく変えつつあります。特に、AIによる需要予測と在庫管理の最適化は、無駄なコストの削減と顧客満足度の向上に貢献しています。
たとえばセブン-イレブンはAIを活用した需要予測システムを導入しました。各店舗の販売データをリアルタイムで分析することで、最適な在庫量を確保しています。これにより、商品の欠品を防ぎながら廃棄ロスを年間約30%削減することに成功しました。
ローソンはIoT技術を用いた在庫管理システムを導入し、各店舗の在庫状況を一元管理することで、商品の過剰発注や不足を防止しています。このシステム導入後、商品補充にかかる時間が約20%削減され、作業効率が大幅に向上しました。
これらの事例は、AIとIoTが物流業務を効率化し、無駄なコストを削減するだけではなく、顧客満足度を高めるための重要なツールであることを示しています。
物流の未来は、これらの技術を活用することで、より持続可能で顧客に優しいサービスへと進化していくでしょう。
IoTセンサーで実現するリアルタイムな配送状況把握:配送効率向上とトラブル防止
IoTセンサーの導入は、物流業界におけるリアルタイムな配送状況の把握に貢献する技術です。配送効率の向上とトラブル防止につなげられます。
たとえば、日立物流はIoTセンサーをトラックやコンテナに取り付け・温度・湿度・振動などのデータをリアルタイムで監視しています。これにより、輸送中の異常を即座に検知し、温度変化が品質に影響を与える食品や医薬品の安全な配送を実現しています。
また、日本通運はIoT技術を活用した「スマート物流プラットフォーム」を導入し、トラックの位置情報や運行状況をリアルタイムで把握しています。
このシステムにより、配送ルートの最適化が進み、トラックの稼働率が約10%向上しました。さらに、渋滞や事故などのトラブルを事前に察知し、配送遅延を未然に防ぐことができるようになりました。
これらの事例は、IoTセンサーが物流業務の透明性を高め、効率的で安全な配送を実現するための重要なツールであることを示しています。
リアルタイムなデータに基づく管理は、今後の物流業界における標準となり、さらなる効率化とサービス向上を促進していくでしょう。
AIやIoT以外の解決策
物流業界の人手不足解消策として、規制緩和や異業種連携、シェアリングエコノミーの活用が注目されています。例えば、規制緩和では、女性や高齢者が働きやすい条件を整えるための労働時間規制の見直しが進んでいます。
また、異業種連携では、食品業界と物流業界が共同で配送することで効率を高めた事例があります。さらに、シェアリングエコノミーを活用した軽貨物車両のシェアリングサービス「PickGo」が、ドライバー不足を補完しています。
まとめ
ここまで物流業界の課題に関して、具体的な内容や取り組むべき対策、未来の予測を解説しました。物流業界では人手不足の進行により、自動化などの対策が求められています。また、自動化による業務効率化は環境への負荷の面からも重要な取り組みです。
物流業界において、自動化や効率化による人手不足や環境問題への対策は必須な状況です。ぜひこの記事を参考に、具体的な取り組みをはじめてみてください。